職人の”業”
1.割り込み
工場内は摂氏約60度もあります。炉の中に、包丁の元となる鉄の延べ棒を入れ、温度が上がるまで待ちます。真っ赤になった延べ棒の温度は摂氏1000度~1200度その延べ棒に切り口を入れ、包丁の要である鋼を差し込みます。この工程を割り込みといいます。割り込んだ部分に、鋼と鉄が密着するよう、いわゆる接着剤の役割をするてつろをまぶします。


2.沸かし
うまく密着したところで、たたきのばします。ここまで工程を沸かしの工程を沸かしの工程といいます。包丁を作るか、包丁以外のものたとえば鎌等を作るかは、こののばし方によって決定されます。
そして延べ棒から切り離し、再び炉の中へ入れます。
3.柄尻
柄尻の工程では、包丁の柄をつける部分を作成します。


4.鍛造(たんぞう)
おおよその形を決める荒作りになってくると、次第に包丁の原型が伺えてきます。
5.形作り
サイズの参考になるサンプルを粗造りに当て、カッターでせんぺんを切る形作り。包丁の背中に当たる部分ができあがって行きます。


6.研磨
角をなめらかにするため、おおよその研磨をします。
蚊焼包丁の証である、蚊焼という文字と制作工場のマークを刻印します。
7.焼き入れ
急激な温度変化で包丁が歪んだり痛まないようにするため、はじめは600度の鉛の中に入れて温めます。徐々にに暖まってきたところで、800度の鉛の中に移し替え、本格的な焼き入れを行います。2,3分たってから水につけ、焼き入れの工程を終えます。


8.焼き戻し
焼き入れが終わると一度さましてから焼き戻しに移ります。焼き戻しは、100度に温めた油の中に入れ、そのまま170度まで温度を上昇させていきます。この温度に達してから約30分間放置した後に、ひとまず油をすすぎ、その後木くずで本格的に油を取り除きます。
9.ひずみとり
しばらくねかせたあと、ひずみとりを行います。ひずみぐあいが見やすいように天草研ぎ石の白い粉をつけ、手作業で修正していきます。


10.荒研ぎ
酸化によってさびないよう、研硝液につけながら、荒研ぎをしていきます。荒研ぎでは刃先の曲線がきれいにでるよう、職人の感を頼りに入念な作業が行われます。
11.仕上げ
最後の工程である仕上げです。
この工程で最も重要なのは包丁に命を吹き込むという、
カヤキ包丁のもう一つの評判である切れ味がここで文字通りとぎすまされていきます。砥石研ぎに全神経を集中させ同時に鋼に艶を持たせる。切れるか切れないか、よい包丁かどうかは、この作業一つで決まる。いわゆる職人の腕の見せ所なのです。また、ことときに使われるかやきの水も優れた包丁を作るための一役を担っています。


12.柄付け
柄をはめこみ、時間をかけて細かい作業をくり返したり、自分で作ったやすりで削り取ったりして丁寧に仕上げます。そして十分に納得し、商品として認められたものだけが選ばれます。このようにして桑原鍛冶工房の庖丁が作られていくのです。